核なき未来は待つものじゃない——93歳の被爆者に学ぶ「継承ではなく実行」をITから始める

夕日を背景に原爆ドームと川、飛び立つ鳩、そしてノートパソコンのキーボードを打つ手の写真 未来へ

IT企業経営者として感じた核なき世界への責任

佐々木 優です。T企業を経営しています。

先日、NHKアカデミア「田中熙巳(後編)核兵器廃絶への戦い”継承ではなく実行を”」(Eテレ、2025年8月27日放送)を視聴して、正直なところ、言葉を失いました。これまで核兵器の問題について真剣に考えたことがなかった自分が、とても恥ずかしく思えたのです。

番組を見終わった後、しばらく画面の前で動けませんでした。田中さんの「継承してもらうことを望んでいない、核兵器をなくすことを実行してほしい」【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】という言葉が、私の心に深く刺さったからです。

「継承ではなく実行を」という核兵器廃絶への想い

田中熙巳さんは1932年4月29日生まれの93歳で、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協/Nihon Hidankyo)の代表委員を務めてこられた方です。2024年12月10日にはノルウェー・オスロで行われたノーベル平和賞授賞式で、Nihon Hidankyoを代表して受賞演説も行われました※1。番組の中で最も印象的だったのは、若い参加者からの質問に答えた時のお言葉でした。

「被爆者のことを伝えていけば核兵器をなくす風習や状況ができてくると私はそう思わないんですよ。皆さんたちが核兵器は無くさなくてはいけないんだという気持ちを持つことが大事なんですね」【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】

この言葉を聞いた時、私は愕然としました。被爆体験を「継承」することが大切だと漠然と思っていた私は、完全に間違っていたのです。田中さんが求めているのは、単なる知識の継承ではなく、核兵器廃絶への具体的な「実行」だったのです。

核兵器の現実を知らなすぎた自分

番組で改めて知ったのは、現在の核兵器保有状況の深刻さでした。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の2025年版年鑑によると、2025年1月時点で世界の核兵器保有数は12,241発※2に上り、その一部(約2,100発)が高い即応態勢、約3,912発が配備と推計される(SIPRI 2025)※3という恐ろしい現実です。

田中さんは番組の中で語ります。「一発で広島、長崎を崩壊させてしまった。そして一発で何十万人もの市民を殺してしまった、そういう兵器が今1万2000発もあると。しかもすぐ発射できるのが2000発から4000発ぐらいあるという状況に私たち、皆さん、もちろん皆さんたちは生活をしていると、いうことを本当に絶えずと言っていいぐらい認識していただきたい」【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】

IT業界で働く私は、日々テクノロジーの進歩に触れていますが、この破壊的な技術の存在については無知でした。一人で会社を切り盛りしながら、新しい事業計画を考えている間にも、地球上にはこんな恐ろしい兵器が存在し続けている。この現実を受け入れるのは、正直とても辛いものでした。

ノーベル平和賞受賞に込められた被爆者への想い

番組では、2024年ノーベル平和賞をNihon Hidankyoが受賞したことについても触れられていました。田中さん自身、まったく予想していなかった受賞だったそうです。

でも、田中さんの分析には深く考えさせられました。ロシアのウクライナ侵攻で核保有大国が核の威嚇を行い、中東情勢の悪化で核兵器使用のリスクが高まっている。「核のタブー」と呼ばれる暗黙のルールが崩されそうになっている今だからこそ、Nihon Hidankyoに白羽の矢が立ったのではないかという見解を示されていました。【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】

私はこれまで、ノーベル平和賞受賞を単純に「良いニュース」として捉えていました。でも実際は、世界情勢の危険な変化を反映した、むしろ「警告」だったのかもしれません。

核抑止論に対する被爆者の鋭い反論

番組で参加者から核抑止論について質問があった時の田中さんの答えも印象的でした。

「核兵器は人道に反する兵器なんですよね。国際的に見ても違法な兵器になってるんですね、実際。で、そういう兵器を持って戦争に備えるということ自体がもう大きな矛盾ですよね」【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】

より正確に表現するなら、核兵器禁止条約(TPNW)※4により締約国にとっては違法と位置づけられ、1996年の国際司法裁判所(ICJ)勧告的意見でも国際人道法上の深刻な問題が指摘されている、ということになります。

田中さんはさらに続けます。「抑止力と言っても、使うんですね、最終的には。使わないんであれば必要ないわけだから。使うから抑止力として役立つと思って、使ったらどうなるかっていうことを本来は知っておかなければいけないですよね」【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】

この論理は、とてもシンプルで明快でした。核兵器は使うことを前提とした抑止力である以上、使われた時の結果を十分に考慮せずに抑止論を語ることはできない。当たり前のことなのに、なぜ私はこれまで気づかなかったのでしょうか。

日本政府の姿勢に感じる複雑さ

田中さんが日本政府について語った部分も、私の心に重くのしかかりました。

「日本の政府は唯一の戦争被爆国と世界に向かって絶えず言ってるわけですよ。だとすればこの禁止条約にまず先頭切って署名批准して、そしてこの非人道条約を世界中に広げていくという役割を果たすのは日本政府ではないかと思うんですけども、それと反対のことをやってる」【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】

ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の公式データベースによると、日本はTPNWに署名も批准もしていません※5。アメリカの軍事力に頼る安全保障政策のために、被爆国としての役割を果たせないでいる。田中さんが「一番悔しいこと」と表現されたこの現実に、私も深い憤りを感じました。

国連での草の根活動に学ぶ核なき世界への歩み

1978年と1982年の国連特別総会での活動についての話も印象的でした。番組では、田中さんたちがニューヨークの各国大使館や市民団体、学校を訪問し、被爆の実相を伝える活動を行ったことが紹介されていました。

「私自身もですね、どうやったらいいかっていうのが分からない中で、やっぱり国連を動かす以外に国際情勢を変えていくのはないんだという風に思いましたので、1978年にですね、国連、第1回の国連特別総会っていうのが開かれるんですけれども、その4年後の1982年に第2回が開かれるんですね。たくさんの被爆者を出席してもらって、で、出席すると同時にですね、ニューヨークの様々な国の大使館を訪問したり、それから市民団体を訪問したり、学校を訪問したりすることで、被爆の実相と言いますかね、私たち被爆の実相と言ってるんですけども、原爆の非人道的な実情を多くの市民の人や外交官に話をしていうことをやり始めたんですね」【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】

この話を聞いて、私は自分の無力感を感じました。IT企業の経営者として、私にはある程度の影響力や発信力があります。でも、それを平和のために使ったことがあるでしょうか。厚生労働省の公表値によると、被爆者の平均年齢が86.13歳(2025年3月末時点)※6になり、高齢化が進む中、私たち若い世代が具体的な行動を起こさなければ、誰が動くのでしょうか。

若い世代への期待と核兵器廃絶への責任

番組の最後で田中さんが語った言葉は、私への直接的なメッセージのように感じました。

「被爆者自身が年を取ってきておりまして、もう85歳、平均にすると85歳です。で、ですから、そんな大きな力を持っていないわけです。とにかく若い人たちが自分たちのこれからの未来が核によって脅かされているということを知るということが大事だと思っております」【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】

「被爆者以外の人たちは、被爆者が体験してることを現実にあったものとして理解する。そしてその被爆者たちが体験したことは今も起こるということを知る。そういうのがこれからの運動に必要じゃないかな」【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】

独身で31歳の私には、まだ家族はいません。でも、将来パートナーを見つけて子どもを持った時、その子たちが核兵器の脅威にさらされる世界で生きなければならないのでしょうか。そう考えると、今から行動を起こすことの重要性を感じずにはいられません。

うまくいかない時でも諦めない被爆者の想い

番組の中で、参加者から「逆境を乗り越えるためのアドバイス」を求められた田中さんの答えにも感動しました。

「核兵器が地球上に存在するということは大変なことなのですね。絶対それをなくしていかなくちゃいけないというのが私の生きていく上の柱になってることなわけですね。だからうまくいかないこともたくさんありますけども、うまくいかない時、ダメだという風に思わないことにしてるわけですね。うまくいく方法をやっぱり探して、作っていくしかないんですね」【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】

93歳の田中さんが、これほどまでに前向きで力強い姿勢を保ち続けていることに、私は深い敬意を感じました。IT業界でも、失敗や挫折は日常茶飯事です。でも、田中さんの言葉は、もっと根本的で普遍的な「諦めない心」について教えてくれました。

質的に違う兵器への理解

番組で田中さんが強調していたのは、核兵器が普通の兵器と「質的に違う」ということでした。

「普通の兵器は、まあ今のウクライナでもそうですけども一発でもやっぱり数十人ですよ、亡くなるのは。核兵器は一発で何十万人って殺してるし、殺したことがあるわけですよ」【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】

この違いを理解することの重要性を、私は番組を通して初めて実感しました。単に威力が大きいだけではなく、人道に反する非人道的な兵器であるという認識。この理解なしに、核兵器の問題を語ることはできないのです。

IT企業経営者として私にできること

番組を見終わった後、私は自分にできることを真剣に考えました。

まず、会社のメンバーと核兵器の問題について話し合う場を設けようと思います。IT業界の人間は情報感度が高く、社会問題への関心も強い傾向があります。でも、核兵器の問題については、私を含めて無知な人が多いのではないでしょうか。

次に、ITの力で平和活動に貢献できないか検討したいと思います。VR技術を使った被爆体験の伝承、AIを活用した核軍縮情報の分析・可視化、ブロックチェーン技術による核兵器査察システムの透明化など、アイデアはいくつか浮かびます。

また、会社のCSR活動として、平和教育支援のプログラムを立ち上げることも考えています。若い世代が核兵器の問題について学び、議論する機会を作ることで、田中さんが求める「実行」につながるかもしれません。

特に、私たちIT業界の特性を活かした取り組みを模索したいと思います。オープンソースの精神で情報を共有し、グローバルなコミュニティと連携して平和のためのテクノロジーを開発する。これは、まさにIT業界が得意とする分野です。

番組で感じた危機感と希望

番組全体を通して感じたのは、現在の核を巡る状況がいかに深刻かということでした。田中さんは「今の核状況が実際に大変厳しいという状況が分かっていない」「それはお互いにその問題を話し合う環境ができてないから」と指摘されていました。【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】

確かに、私自身も含めて、多くの人が核兵器の問題を「遠い話」として捉えているのかもしれません。でも、田中さんの言葉を聞いて、これは紛れもなく「私たちの問題」だと理解しました。

同時に、番組を通して希望も感じることができました。93歳になってもなお、これほどまでに力強く前向きに活動を続ける田中さんの姿を見て、私たち若い世代がしっかりと行動すれば、きっと世界を変えることができると信じるようになったのです。

「継承」から「実行」への意識転換

番組で最も印象的だったのは、やはり「継承」についての田中さんの考え方でした。

「継承してもらうことは望んでないんですよ。核兵器をなくすことを実行して欲しいんですよ。それを継承継承というもんですから、話を伝えればいいような理解をされている向きがあるなと私は思うので、そういう継承するという捉え方をむしろ取り払った方がいいかもしれませんね」【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】

この言葉は、被爆体験の「伝承」が重要だと思っていた私の認識を根本から覆しました。大切なのは情報を受け継ぐことではなく、核兵器廃絶のための具体的な行動を起こすこと。田中さんが求めているのは、私たち若い世代が当事者意識を持って動くことだったのです。

この気づきは、私のビジネスの考え方にも影響を与えました。IT業界では「ユーザーファースト」という言葉がよく使われますが、真に重要なのは、ユーザーの課題を解決する「実行」であって、単に情報を提供することではありません。核兵器廃絶についても、同じように「実行」に重点を置いて考えるべきなのです。

現実を直視する勇気

番組を見て、私は現実を直視する勇気の大切さを学びました。核兵器の存在という恐ろしい現実から目を逸らすのではなく、それを受け入れた上で行動を起こすこと。

田中さんが「核戦争で人類が破滅すると私は思っておりますから、そうならないためにできるだけのことをやっていこうと思ってきています」【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】と語った時、その覚悟の重さに圧倒されました。

この覚悟は、起業家としての私の姿勢にも通じるものがあります。厳しい現実を受け入れながらも、それを変えるために行動し続ける。失敗を恐れずに、より良い未来を作るために挑戦し続ける。田中さんの姿勢は、私にとって大きな学びとなりました。

若い世代への期待と責任

番組の最後で田中さんが「若い人たちが力を合わせて、今の状況を変えていくということができれば、変わっていくんだろうという風に思いますよ」【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】と語った時、私は大きな責任を感じました。

被爆者の平均年齢が86.13歳という現実。時間は限られています。私たち若い世代が今動かなければ、貴重な証言や体験が失われてしまう。そして何より、核兵器廃絶という目標の実現が遠のいてしまう。

特に、私たちミレニアル世代やZ世代は、デジタルネイティブとして情報発信力を持っています。SNSやオンラインプラットフォームを活用して、核兵器の問題を同世代に伝えることができる。この力を平和のために使わない手はありません。

IT業界の責任と可能性

IT業界に身を置く者として、私は特別な責任を感じています。テクノロジーは人類に多大な恩恵をもたらしてきましたが、一方で核兵器という究極の破壊技術も生み出してしまいました。

だからこそ、IT業界の人間は平和のためのテクノロジー活用について真剣に考える必要があるのではないでしょうか。AIやビッグデータ、VR/AR技術などを平和教育や核軍縮に役立てる方法を模索すべきです。

具体的には、以下のような取り組みが考えられます:

  1. VR/AR技術による被爆体験の継承:リアルな被爆体験を次世代に伝える技術開発
  2. AIによる核軍縮監視システム:衛星画像分析による核施設の監視
  3. ブロックチェーンによる核兵器管理:透明性の高い核兵器管理システムの構築
  4. ソーシャルネットワークの活用:平和教育プラットフォームの開発

これらの技術開発を通じて、私たちIT業界は核兵器廃絶に具体的に貢献できるはずです。

国際協力とネットワーキング

番組を通して感じたのは、核兵器廃絶は一国だけでは達成できない、国際的な協力が必要な課題だということです。田中さんたちが国連で行った草の根活動も、まさに国際協力の一例でした。

IT業界で働く私たちは、国境を越えたネットワークを持っています。GitHubでのオープンソース開発、国際的なカンファレンスでの交流、グローバルなスタートアップエコシステム。これらのネットワークを活用して、平和のための国際的な取り組みを推進することができるのではないでしょうか。

例えば、世界各国のIT企業が連携して、平和のためのテクノロジー開発に取り組む国際コンソーシアムを立ち上げることも可能です。技術の力で国境を越えた平和運動を支援する、そんな取り組みが実現できればと思います。

行動への決意と具体的なステップ

番組を見終わった後、私は具体的な行動を起こす決意を固めました。まず短期的には以下のような取り組みから始めたいと思います:

1. 社内での意識啓発

  • 月1回の平和勉強会の開催
  • 核兵器問題に関する情報共有の場作り
  • 社員の自発的な議論を促進する環境整備

2. 技術的な貢献

  • 平和教育アプリの開発検討
  • VR技術を活用した被爆体験継承システムの研究
  • 核軍縮情報の可視化ツールの開発

3. 社会的な活動

  • 核兵器廃絶関連のイベントへの積極的参加
  • 平和団体との連携強化
  • 政策提言活動への参加

4. 情報発信

  • 会社ブログでの定期的な情報発信
  • SNSを活用した啓発活動
  • 業界内での意識啓発

中長期的には、これらの活動を通じて得た知見を活かし、より大きなインパクトを持つ取り組みを企画していきたいと考えています。

番組を見た人への呼びかけ

この番組を見た人、そしてこの記事を読んでくださった人に、心からお願いがあります。

田中さんの「継承ではなく実行を」という言葉を、ぜひ心に留めておいてください。そして、核兵器の問題を「知識」として受け取るだけでなく、何らかの「行動」に移してください。

小さなことでも構いません。家族や友人と核兵器について話し合う、関連書籍を読む、平和イベントに参加する、SNSで情報をシェアする。どんな小さな行動でも、それが積み重なれば大きな力になるはずです。

特に、私と同世代のIT業界で働く方々には、技術の力を平和のために活用することを考えていただきたいと思います。私たちには、イノベーションを通じて世界を変える力があります。その力を平和のために使いませんか。

核なき世界への希望と決意

番組を見て、私は絶望的な気持ちになることもありました。でも同時に、大きな希望も感じました。93歳の田中さんが、これほどまでに力強く前向きに活動を続けている姿を見て、私たち若い世代がしっかりと行動すれば、きっと世界を変えることができると信じるようになりました。

IT業界で働く私たちは、「不可能を可能にする」ことを日常的にやっています。かつては夢物語だったインターネット、スマートフォン、AIといった技術が、今では当たり前のものになっています。核兵器廃絶も、同じように実現可能な目標として捉えるべきではないでしょうか。

技術の力、若い世代の行動力、そして何より、田中さんのような被爆者の方々の想いを受け継いで、私たちは核なき世界の実現に向けて歩み続けなければなりません。

最後に:未来への責任

田中熙巳さんの番組を見て、私は多くのことを学びました。そして何より、行動を起こさなければならないという強い使命感を感じました。

被爆者の方々が高齢化する中、私たち若い世代が核兵器廃絶の担い手になる時が来ています。田中さんの「実行してほしい」という願いに応えるため、私は今日から具体的な行動を開始します。

核兵器のない平和な未来は、私たちの手で作り上げるものです。一人ひとりの小さな行動が、やがて大きな変化を生み出すことを信じて、共に歩んでいきましょう。

私たちIT業界に身を置く者として、技術の力で平和に貢献する。そして何より、田中さんが遺してくださった「継承ではなく実行を」という言葉を胸に、核なき世界の実現に向けて全力で取り組んでいきます。

この記事を読んでくださったあなたも、ぜひ一緒に行動を起こしてください。未来は、私たち一人ひとりの行動にかかっているのですから。


佐々木 優




この記事について

執筆者:佐々木 優
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企画・取材:miku
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この記事は、ITコンサルティングを専門とする 株式会社リミブレイク が運営するメディアとして、独自の取材と分析に基づき制作されました。


脚注

※1 ノーベル財団公式サイト「The Nobel Peace Prize 2024」受賞主体:Nihon Hidankyo(日本原水爆被害者団体協議会)、授賞式:2024年12月10日/オスロ(nobelprize.org)
※2 SIPRI Yearbook 2025, Chapter 6「World nuclear forces」, Press release 2025-06-16
※3 同上、核兵器の即応態勢・配備状況に関するデータ
※4 Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons (TPNW), 2017年採択、2021年発効
※5 ICAN公式サイト「Japan」ページ及び「Treaty Status」一覧(icanw.org/japan, icanw.org/treaty-status)
※6 厚生労働省「被爆者数・平均年齢(令和7年3月末現在)」(mhlw.go.jp/stf/newpage_26531.html)、時事通信等主要メディア報道

番組情報
・前編:NHKアカデミア「田中熙巳(前編)13歳の被爆体験」2025年8月20日(火)22:00-22:30、Eテレ
・後編:NHKアカデミア「田中熙巳(後編)核兵器廃絶への戦い”継承ではなく実行を”」2025年8月27日(火)22:00-22:30、Eテレ

補足:被爆者の声を聞く意味

番組を視聴して、もう一つ強く感じたことがあります。それは、被爆者の声を直接聞くことの重要性です。

田中さんが番組の中で語った被爆体験は、想像を絶するものでした。「その時目にした人々の死にざまは、人間の死とはとても言えないありさまでした。誰からの手当ても受けることなく苦しんでいる人々が何十人何百人といました。たとえ戦争といえどもこんな殺し方、傷つけ方をしてはいけないと、強く感じました」【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】

この言葉を聞いた時、私は本やインターネットで読んだ情報とは全く違う、生々しい現実を突きつけられた気がしました。数字やデータでは伝わらない、人間の苦痛と悲しみ。それを実際に体験した人の声には、何物にも代えがたい重みがあります。

テクノロジーと人間性のバランス

IT業界で働く私にとって、この番組はテクノロジーと人間性のバランスについて深く考えるきっかけにもなりました。

私たちは日々、効率性や利便性を追求し、AIやロボティクスなどの先端技術の開発に取り組んでいます。しかし、技術の進歩が必ずしも人類の幸福につながるとは限らない。核兵器はまさにその典型例です。

田中さんが強調していた核兵器の「質的な違い」は、技術者としての私にも深い反省を促しました。どんなに高度な技術でも、それが人間の尊厳を踏みにじるものであってはならない。技術開発には常に倫理的な視点が必要だということを、改めて強く感じました。

若い世代のデジタル活用術

番組を見て、私は若い世代ならではのデジタル活用方法についても考えるようになりました。

田中さんの世代が国連での草の根活動や直接対話を通じて平和を訴えてきたように、私たちの世代にはデジタルツールという強力な武器があります。SNSでの情報拡散、オンラインでの国際的なネットワーキング、クラウドファンディングによる平和活動の資金調達など、様々な可能性があります。

特に、TikTokやInstagramといった若者に人気のプラットフォームを活用して、核兵器の問題をわかりやすく伝える動画コンテンツを制作することも有効でしょう。堅い政治的なメッセージではなく、日常生活に関連付けた形で核兵器廃絶の重要性を伝えることができれば、より多くの同世代に響くはずです。

企業の社会的責任を再考する

この番組を見て、私は自分の会社の社会的責任についても深く考えるようになりました。

これまでCSR活動といえば、環境保護や地域貢献といった比較的身近なテーマに焦点を当てていました。しかし、核兵器廃絶という人類共通の課題に対して、企業として何ができるのか、真剣に検討する必要があると感じています。

具体的には、以下のような取り組みを検討しています:

1. 平和技術開発への投資

  • 平和構築に貢献する技術の研究開発
  • 紛争予防や平和教育に活用できるアプリケーションの開発
  • オープンソースでの技術公開による国際協力の促進

2. 従業員の平和意識向上

  • 定期的な平和教育研修の実施
  • 被爆者講演会の開催
  • 平和関連書籍の社内図書館への充実

3. 業界全体への働きかけ

  • IT業界団体での平和活動推進
  • 他社との連携による平和技術開発コンソーシアムの設立
  • 国際的なIT企業との平和プロジェクトの共同実施

教育現場での活用可能性

番組を見ながら、私は教育現場での活用可能性についても考えました。

田中さんの「継承ではなく実行を」という言葉は、まさに現代の教育が直面している課題を表しているのではないでしょうか。知識を詰め込むだけでなく、それを実際の行動に移すことのできる人材を育成することが重要です。

IT企業として、教育現場との連携も検討したいと思います:

1. 教育アプリの開発

  • 被爆体験をVRで体験できる教育コンテンツ
  • 核兵器の歴史と現状を学べるインタラクティブな学習アプリ
  • 平和について考えるためのディスカッション支援ツール

2. 教員研修の支援

  • 平和教育におけるICT活用方法の研修
  • デジタルツールを使った平和学習の事例共有
  • 国際交流を促進するオンラインプラットフォームの提供

3. 学生との協働プロジェクト

  • 大学生との平和技術開発プロジェクト
  • 高校生向けのプログラミング教育を通じた平和意識の醸成
  • 国際的な学生交流プログラムの技術支援

国際的なネットワーキングの重要性

田中さんが番組で語った国連での活動は、国際的なネットワーキングの重要性を改めて教えてくれました。

「国連の大きなホールがあるわけですけど、その国連のホールで原爆展をやっていったらどうだろうかと。これは国連に集まってくる世界の外交官たち、それから国際政治に関わる人たちの目に留まることもできるようになったと思いますし、この国連のギャラリーと言ってる展示場はですね、市民も入れることになってるので、ニューヨークの学生たちも自由に入りますし、国連に観光に来た人たちも入って見ることができる」【NHKアカデミア/後編/2025年8月27日】

この話を聞いて、私はグローバルなIT業界のネットワークを平和のために活用することの可能性を感じました。世界各国のIT企業、スタートアップ、エンジニアコミュニティと連携して、平和のための技術開発や情報発信を行うことができるはずです。

個人的な行動計画の具体化

番組を見て、私は個人的な行動計画をより具体化しました:

短期的な取り組み(3ヶ月以内)

  1. 被爆者の証言動画を社内で定期的に視聴する勉強会の開始
  2. 核兵器廃絶に関する書籍を10冊以上読破
  3. 平和関連のNGOやNPOとの接触・連携の模索
  4. SNSでの平和に関する情報発信の開始

中期的な取り組み(1年以内)

  1. 平和教育アプリのプロトタイプ開発
  2. 被爆者証言のデジタルアーカイブ化プロジェクトへの参加
  3. 国際的な平和技術開発コンソーシアムへの参加検討
  4. 大学や高校での講演活動の開始

長期的な取り組み(3年以内)

  1. 平和技術開発専門部署の会社内設立
  2. 国際的な平和技術シンポジウムの開催
  3. 次世代リーダー育成プログラムの立ち上げ
  4. 被爆者の声を永続的に保存・発信するプラットフォームの構築

技術者としての倫理観

番組を通して、私は技術者としての倫理観についても深く考えさせられました。

田中さんが指摘した核兵器の非人道性は、私たち技術者が開発するあらゆる技術に通じる問題です。どんなに素晴らしい技術でも、それが人間の尊厳を損なうものであってはならない。AI、ロボティクス、バイオテクノロジーなど、現在開発が進められている先端技術についても、常に倫理的な観点からの検証が必要です。

私は今後、会社の技術開発において「平和性チェック」を導入することを検討しています。開発する技術が平和に貢献するものか、逆に害をもたらす可能性はないか、定期的に検証する仕組みを作りたいと思います。

メンタルヘルスケアの重要性

番組を見て、もう一つ気づいたことがあります。それは、平和活動に取り組む人々のメンタルヘルスケアの重要性です。

田中さんは93歳という高齢にもかかわらず、長年にわたって核兵器廃絶のために活動を続けてこられました。その原動力は一体何なのか。番組を見ていて、それは強い使命感と同時に、仲間との支え合いや希望を失わない精神力にあるのではないかと感じました。

私たち若い世代が平和活動に取り組む際も、長期的な視点で持続可能な形で活動を続けるためには、メンタルヘルスケアが重要になってくるでしょう。同じ志を持つ仲間とのネットワーク作り、適度な休息、そして小さな成果も大切にする姿勢が必要だと思います。

デジタルデバイドの解消

番組を見て、もう一つ考えたのはデジタルデバイドの問題です。

私たち若い世代は、デジタル技術を駆使して情報発信や国際的なネットワーキングを行うことができます。しかし、被爆者の方々の多くは高齢であり、デジタル技術に不慣れな方も多いでしょう。

この世代間のデジタルデバイドを解消し、被爆者の方々の貴重な証言をデジタル形式で保存・発信することも、私たちの重要な役割だと思います。技術的なサポートを提供することで、より多くの人々に被爆者の声を届けることができるはずです。

文化的な側面からのアプローチ

核兵器廃絶という重いテーマを、より多くの人々に関心を持ってもらうためには、文化的な側面からのアプローチも有効だと思います。

例えば、アート、音楽、映像作品といった文化的なコンテンツを通じて、平和の重要性を伝えることができるでしょう。IT技術を活用して、インタラクティブなアート作品や、没入感のある音楽体験、感動的な映像作品を制作することも可能です。

文化は国境を越えて人々の心に響く力を持っています。技術と文化を融合させることで、より効果的な平和啓発活動ができるのではないでしょうか。

最終的な決意:行動する当事者として

この長い記事を書き終えるにあたって、私は改めて田中熙巳さんの言葉を心に刻みます。

「継承ではなく実行を」

この言葉は、私たち若い世代への強いメッセージです。被爆者の体験を単に「知識」として受け継ぐのではなく、核兵器廃絶のために具体的な「行動」を起こすこと。それが、私たちに求められていることなのです。

私は今日から、IT企業の経営者として、一人の市民として、そして未来に責任を持つ若者として、核兵器廃絶のための行動を開始します。小さな一歩かもしれませんが、多くの人々と力を合わせれば、きっと大きな変化を生み出すことができるはずです。

この記事を読んでくださったあなたも、ぜひ一緒に行動を起こしてください。田中さんが93歳になってもなお諦めずに活動を続けているように、私たちも希望を失わず、核なき世界の実現に向けて歩み続けましょう。

未来は、私たち一人ひとりの選択と行動にかかっています。その責任の重さを感じながら、同時に可能性の大きさにも希望を抱いて、共に前進していきましょう。


最後に:田中熙巳さんの言葉を胸に、核なき未来への誓い

田中熙巳さんの番組を見て、私の心の底から湧き上がったのは、核兵器という存在に対する激しい憎悪と拒絶でした。この人類史上最も残虐で非人道的な兵器を、なぜ私たちは今もなお地球上に存在させ続けているのでしょうか。一発で何十万人もの命を奪い、生き残った人々にも長年にわたって苦しみを与え続ける悪魔の兵器。その存在自体が人間の尊厳への冒涜です。私は心の底から叫びたい。核兵器を憎む、拒絶する、絶対に許さない、と。

13歳で被爆し、93歳になった今もなお核兵器廃絶のために闘い続ける田中さんの姿を見て、私は被爆者の方々の筆舌に尽くしがたい苦しみの深さを改めて思い知りました。80年近くもの間、身体的な苦痛と精神的な傷を抱えながら、それでも次の世代のために声を上げ続けてこられた。その想いの重さを前に、私は自分の無知と無関心を深く恥じました。今、私にできることは何なのか。IT企業の経営者として、一人の市民として、未来に責任を持つ人間として、どのような行動を起こすべきなのか。真剣に考え、そして実行に移さなければなりません。

田中さんの「継承ではなく実行を」という言葉が、私の心に深く刻まれています。平和への願い、平和への祈り、これは単なる理想ではありません。すべての人が笑って暮らしていける世界、子どもたちが核の脅威におびえることのない未来、それは私たち一人ひとりの行動によってのみ実現できるのです。被爆者の方々の想いと、それが時として虚しく響く現実。その間に立つ私たちは、もう傍観者ではいられません。

核兵器のない世界は、私たちの手で必ず実現できる。田中さんの不屈の精神と93年の人生が教えてくれたのは、希望を失わず行動し続けることの大切さです。私は今日から、一歩ずつ、確実に前進していきます。




この記事について

執筆者:佐々木 優
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