皆さん、こんにちは。佐々木優です。
突然重い話から始まって申し訳ないのですが、今日は、私たちが目を背けがちな、しかし無視できないテーマについてお話しします。それは「もし東京が核攻撃を受けたら」というシナリオについてです。
なぜ今この話を、と思われるかもしれません。私はIT企業の経営者として、普段から事業継続計画(BCP)に携わっています。その過程で、内閣官房が公表する国民保護ポータルサイトの情報や、国内外の専門機関が示す被害想定を基にしたシミュレーションデータに触れる機会がありました。そこで示されたのは、私たちが住むこの東京という都市の脆弱性を示す、客観的で、だからこそ衝撃的な数字の数々でした。
広島・長崎の悲劇から80年。私たちは「核兵器が使われることはない」という希望的観測に頼っていないでしょうか。しかし、国際情勢の緊張を見る限り、この脅威は決して過去のものではありません。これは感情的な扇動ではなく、冷静なリスク分析として共有すべき現実だと考え、筆を執りました。
なお、今回の記事は以下のyoutyube動画を見て、私なりに調査して執筆したものです。
Jアラートと行動の限界:与えられた数分の意味
想像してみてください。平日の朝、通勤ラッシュの最中にJアラート(全国瞬時警報システム)が鳴り響く。
「ミサイル発射情報。屋内に避難し、テレビ・ラジオをつけてください。」
政府の発表によれば、弾道ミサイルが日本に到達するまでの時間は、極めて短い場合で10分とかかりません。一方で、都市防災の専門家の分析では、突然の警報を受けて多くの人々が状況を理解し、避難行動を開始するまでに平均で数分を要するとされています。この致命的な時間差が、生存の可能性を大きく左右します。
公表されている被害想定などを分析すると、特に人口が密集する都心部では、約6割から7割の人々が、警報から着弾までのわずかな時間で適切な避難行動を完了できないと予測されています。例えば、平日朝の新宿駅周辺には数十万人が滞在していますが、その全員を安全に収容できる地下施設は存在しません。これは、私たちの日常がいかに危うい均衡の上に成り立っているかを示す一例です。
閃光、衝撃波、熱線:物理的破壊の現実
核爆発の威力について、科学的なデータは想像を絶する現実を示します。
仮に東京上空で爆発が起きた場合、一瞬にして直径数キロメートルの火球が出現します。その表面温度は摂氏数千度に達し、強烈な熱線は広範囲に及んで深刻な火傷を引き起こし、可燃物を自然発火させます。

続いて、超音速で拡散する衝撃波。これは強力な暴風であり、爆心地から半径3km圏内では、強固な建物を除くほとんどの建造物が倒壊、または深刻な損傷を受けると想定されています。高層ビルの窓ガラスは粉砕され、凶器となって広範囲に飛散します。この直接的な破壊力により、都心部の広範囲が瞬時に壊滅し、生存は極めて困難な状況となります。
火災旋風とインフラ崩壊:都市が燃え尽きる時

直接的な爆風被害を免れたとしても、事態は二次災害へと移行します。熱線と衝撃波によって引き起こされた無数の火災は、やがて合流し、巨大な炎の渦「火災旋風(ファイヤーストーム)」を発生させる可能性があります。
これは、関東大震災でも記録された現象ですが、核災害の規模ではその威力は比較になりません。都市全体が巨大な炉と化し、酸素を消費しながら延焼拡大します。地表温度は摂氏1000度近くに達し、アスファルトや金属さえも溶かす環境では、あらゆる生命活動が停止します。
この時点で、電気、ガス、水道、通信、交通といった都市インフラは完全に機能を失います。地下空間に避難したとしても、換気システムを通じて有毒な煙や一酸化炭素が流入する危険性があり、安全が保証されるわけではありません。爆発から数時間で、東京は制御不能の炎とインフラ崩壊に見舞われるのです。
黒い雨と放射線障害:見えない死の脅威

爆発から約1時間後、新たな脅威が空から降り注ぎます。放射性物質を含んだ塵や灰が、雨と共に降下する「放射性降下物(フォールアウト)」、いわゆる「黒い雨」です。
内閣官房も、こうした状況下では屋外に出ず、コンクリートの建物内などにとどまるよう呼びかけています。なぜなら、この降下物は極めて高い放射線量を含んでおり、被曝すれば深刻な放射線障害を引き起こすからです。
初期の急性障害を免れても、DNA損傷による長期的な影響は避けられません。白血病や癌の発症リスクは著しく増加し、土壌や水源の汚染は数十年、あるいはそれ以上にわたってその土地を人の住めない場所へと変えてしまいます。これは、広島・長崎の被爆者の方々が、戦後長きにわたって苦しめられてきた現実でもあります。
地下避難の課題と都市機能の完全停止

「地下へ逃げれば助かる」という考えは、残念ながら万能ではありません。東京都の防災計画を見ても、既存の地下鉄駅などが想定しているのは、主に地震などの災害であり、核シェルターとしての機能は有していません。収容可能人数には限りがあり、多くの人々が地上に取り残される可能性が高いのが現実です。
仮に地下空間へ避難できたとしても、長期間の滞在は困難を極めます。東京都の調査では、72時間以上の備蓄を持つ家庭は依然として少数派です。水、食料、医薬品の不足、衛生環境の悪化、そして閉鎖空間での心理的ストレスは、生存者にとって過酷な試練となります。
最終的に、日本のGDPの約2割を占める首都圏の機能が完全に停止すれば、その経済的損失は数十兆円規模では済まないと専門家は指摘します。金融市場は崩壊し、サプライチェーンは寸断され、日本の社会システムそのものが麻痺状態に陥るでしょう。復旧には、数十年単位の計り知れない時間と努力が必要となります。
私たちがすべきこと:知識と準備という両輪
ここまで厳しい現実を述べてきましたが、それは絶望するためではありません。正しい知識に基づき、冷静に備えることの重要性を伝えるためです。技術による迎撃システムの向上を期待する一方で、私たち一人ひとりができることがあります。
これは、私が個人的に推奨するものではなく、内閣官房の国民保護ポータルサイトなど、公的機関が推奨している防災の基本です。
放射線災害対策ガイド
私の会社でも、これらの公的な指針に基づき、サイバー攻撃だけでなく物理的な大災害を想定した事業継続計画(BCP)の訓練を本格的に開始しました。
最後に:未来は私たちの現実的な選択にかかっている

日本は、歴史上唯一、核兵器による攻撃を受けた国です。その記憶と教訓を持つ私たちだからこそ、このテーマから目を背けず、現実的に向き合う責任があるのではないでしょうか。
希望的観測にすがるだけでは、自分や大切な人の命を守ることはできません。核兵器のない世界を目指すという崇高な理想と共に、現実の脅威に備えるという冷静な行動が必要です。
この記事を読んでくださった皆さんも、ぜひ今日、ご家族や職場の同僚と話し合う、防災用品を確認するなど、具体的な一歩を踏み出してみてください。その小さな行動の積み重ねこそが、最悪の事態に直面した際の生存確率を高める、最も確実な力となるのです。
未来は、与えられるものではなく、私たち一人ひとりの現実的な選択と行動によって築かれるものです。
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